アイリーン・クラール /
Where is Love ?(you tube)
探し物が見つかりました。
私は随分長い間、今日までこのアルバムそして歌手の名前さえも知らずに何の表記も無いカセットテープとして所持していて、ふと思い出したように聴いていたのでした。
この一つのカセットテープを聴く為にカセットデッキも処分せずに持って。
いつからこのカセットテープが私の手元にあるのかはどうしても思い出せない。
ただ、私がカセットに録音したものではないので誰かが私にくれたか貸したかしたのでしょう。
その時期を大雑把に特定すると、社会人になってからbarなどで出会った音楽仲間と遊んでいた時期の2000年から2005年頃か?
カセットテープに何の思い出もありません。
ただ純粋に女性の歌声やテンポが気に入ったのでした。
大学でジャズ研究会に所属していた私にジャズは私の学生時代を彩った大切な音楽です。大学卒業から数年経っても当時は大学時代をあの頃と言いたくなくて、そう言ってしまうと途端に過去の出来事になってしまうから、輝きを増すばかりの大学時代に追われて逃げるように、とにかくジャズだけは続けて未熟ながら音楽活動をしていたのでした。
そうして何者でもなかった学生という空気を終わらす事無く半分引きずって生きていました。
カセットに録音された音楽は私がやっていた音楽や好きで聴く音楽とは違うものでした。けれどそこにある音楽の特異性は私を見つけました。一見古くさく、ピアノとボーカルのデュオで決して派手ではなくむしろ地味で。一曲とてリズムの出る曲もない。しかし本質はいつもシンプル。とにかく私のなかにスッと入り込んだのです。とても不思議な事。。
そうしてこのカセットテープは僕の元にあるのでした。完璧なものはそれだけで充分ですね。充分と思えるから女性ボーカリストの名前やアルバム名まで求めませんでした。一本のカセットテープの存在で充分だったのです。
過去を過去としない日々でさえも、それでもやっぱりあの頃になってしまう今日という日。私はもう随分前にそのことで苦しまずに済むようになっていました。
カセットテープを再生した時、そうなのか。そうなんだと気づいたのです。だから今日、初めて曲名で検索しました。
本当はもっとずっと前にそうしても良かったのに今日という日がそうすべき日だったのです。
アイリーン・クラール / Where is Love ?
有名どころは知っているけどジャズボーカルには疎い。
検索して出てきた文字に何の想いもなく。ああ。そうなのか。と
けれど私の人生であえて曖昧にしていた一つの物事がはっきりした瞬間でした。
曖昧なまま、過去を過去としたくない。それだけの事で何かにしがみついていた私。捨てきれず引きずって苦しんだ私。無意識にそんなものをアイリーン・クラールという女性の声に溶かしてカセットテープに封じ込めていたのかもしれません。
曖昧を明確にしたことでスッと霧が晴れるようにクリアになり何かが腑に落ちる。
方法は違えどもそういうことはみんなにあるんじゃないかと思う。
僕には曖昧なままなことがたくさんある。明確になる事は多少怖い。
それは時期がくれば自ずと今回のように晴れて行くことなのかもしれないし、ずっと曖昧なままでいる事が喜ばしい事なのかもしれない。
私が大好きな彼女の声。
ほんとうの彼女の声は私がテープで聴いていた擦り切れた声とは少し違うものでした。
それは私をほんの少し微笑ませる予想外の新しい”事実”なのでした。